「ユニクロが商社外しを加速」

Directtrading
2020年、業界ではユニクロが製品製造において商社を外すらしい」と話題になっていました。
2021年、多くの関係者との話の中で「それが事実である」とわかりました。
今後ユニクロの動きに倣う会社も多数出ると予想されます。
コロナ禍に続き、業界の再編、新たな秩序形成を加速させる引き金になるのは間違いないでしょう。
  • ユニクロと商社 関連記事 まとめ 厳選3選
  • アパレル業界の商社の存在
  • ユニクロの消費税込み価格と商社外しのタイミングその裏側
  • ユニクロ商社外しのインパクト
  • ブランド、アパレル、商社、工場、そして個人はどうすべきか?

ユニクロと商社 関連記事 まとめ 厳選3選

ユニクロと商社のビジネスの関係は?
なぜ商社を外すの?
ユニクロの製造の戦略は?
公開記事で参考になるリンク厳選3選

自社工場を持たない「ユニクロ」の躍進を支えた黒子の正体 黒木亮
https://news.livedoor.com/article/detail/17850118/

実質9%値下げよりも影響大?ユニクロ直貿化宣言で業界地図は大変貌か? 河合 拓
https://diamond-rm.net/management/77469/

ユニクロが取引先の工場を公開、縫製に加え素材も 日本企業は小松マテーレやカイハラなど
サステナビリティ企業動向 横山 泰明
https://www.wwdjapan.com/articles/750503

アパレル業界の商社の存在

アパレル産業の中で商社はどの位のシェアを持っているか?
日本のアパレルOEM商社大手会社の売上は?

今、アパレル業界はコロナ禍の影響を大きく受け、新しい秩序へ加速しています。
これまで業界を支えてきたのが「商社」です。
国内生産主流から今や海外輸入が98%になりました。
その資本力と海外ネットワークで、多くのアパレル、ブランドが頼りにしてきた存在です。

日本のアパレルOEM商社大手会社の売上は?

日本のアパレルOEM生産大手会社の売上  
東レインター                       5,993億円
伊藤忠商事繊維部門                    5,374億円
帝人フロンティア                2,122億円
豊島株式会社                       2,000億円
三菱商事ファッション                 1,999億円
日鉄住金物産繊維部門                    1,300億円
ヤギ                       1,189億円
蝶理繊維事業                               1,145億円
田村駒                         1,110億円
三井物産アイ・ファッション株式会社    1,100億円
GSI クレオス                   1,100億円
丸紅ファッションリンク                 630億円
スミテックスインターナショナル              465億円
三共生興繊維関連事業 107億円
合計25,634億円

原料売上も入っている会社もあるので約2兆円といったところでしょうか。
アパレル仕入れを30%とすると概算6.6兆円。
アパレル国内市場は近年では約8兆円ほどとすると商社シェアは約8割。
後の2割は国内中小OEM会社です。

ユニクロの消費税込み価格と商社外しのタイミングその裏側

ユニクロHPから

何故、このタイミングでユニクロは新価格を設定したか?

ユニクロは2021年3月12日から全商品約9%おトクな新価格にしました。
「消費税分プライスダウン」し、よりおトクに、より分かりやすくなり、より買いやすくなりました。


丁度、商品価格に消費税分を加えた「総額表示」が、この4月に義務化されるタイミングです。

参考記事:総額表示の義務化とユニクロの9%値下げ 木内 登英
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2021/fis/kiuchi/0315


購入者目線では、わかりやすい表示は安心感がありますし、表示価格で購入できれば、安心感に加えてお得感も大きいです。

そして、今回の価格戦略はブランド戦略に大きく影響し、特にコモディティの価格戦略は購買選択に大きく作用し、優劣を決める大きな要素ではないでしょうか。

ユニクロ商社外しのコストインパクトと販売価格の関係

この表は税別価格の「今まで」と税込み価格の「これから」についての概算の流通価格比較です。
為替は108円とし輸入通関係数を1.15とし計算しました。

税別の商品価格の差額は¥181であり、大変な価格低減努力が必要に見えます。

 今までこれから差額
①税別価格¥1,990¥1,809 ¥181
②仕入原価3割¥597¥543 ¥54
③商社出値¥580  
④マージン¥17  
⑤製造輸入原価¥562¥543¥19
⑥FOB(US$)$4.53$4.37$0.16

①税別価格の差は②仕入れ原価比較では¥54の差となり、⑤製造輸入原価で¥19、
⑥FOBでは$0.16の差になります。

これは丁度商社マージン¥17と同じになります。

これまで、商社を通じて製造していたユニクロは、自前でする分、コストやリスクは掛かります。
しかし、製造のオペレーション管理や品質管理、貿易業務、ロジスティックスなど、ユニクロの人材や資本力、開発力があれば複数の商社に依頼していた時より、更に全体最適化を推進しやすいと思います。

このようなリスクを取って、流通マージンの削減を真摯に実行し、購入者、お客様に還元するユニクロは更に多くの支持を得て、やがて「ブランド力」という無形資産の拡大につながることは間違いないでしょう。

ユニクロ商社外しのインパクト

ユニクロの連結売上は2.2兆円(2021年8月期通期予想)

商社外し(=直貿化)のインパクトは?

仕入原価30%と仮定すると6,600億円、商社マージン3%と仮定すると198億円
仕入原価40%と仮定すると8,800億円、商社マージン3%と仮定すると264億円

アパレルOEM商社売上ランキング
5,000憶円台x2社
2,000億円台x2社
1,000億円台x7社

ユニクロ直貿がもたらすインパクトは、このような上位規模でも半数以上が消滅又は売り上げ減で弱体化する程のものです。2兆規模に対して3から4割が無くなる計算です。

ブランド、アパレル、商社、工場、そして個人はどうすべきか?

流通の中間を排除すると、どのような影響があるか?

メリット

  • コスト削減効果
  • 伝達スピードアップ
  • 事実がわかる

デメリット

  • 情報収集、サンプル手配の手間
  • 生産指示、進捗管理、品質、検品管理、輸入手続きなど作業増加
  • 少ロットの場合は工場へ影響力少なくコストメリットが出にくい

商社OEMのビジネスチェーン
直貿とは下記の業務を自社でやることを意味しています。

これからどうすべき?

キーワードは
①直貿化
②必要な分だけ必要な時に作る仕組みの導入
③トレーサビリティー 

①直貿化
「利は元にあり」コストが下がれば利益が上がり、利益が上がれば未来に向けてのアクションが取れます。今は個人が直接貿易をする時代です。直貿を少しづつでもスタートしてみましょう。

②必要な分だけ必要な時に作る仕組みの導入
過剰在庫課題の原因を分析すると「MDが当たらない」「需要予測は難しい」ことに行き着きます。OpticalProduction:「良品番高速補充」生産で在庫リスク最小化x販売機会最大化を実現しましょう。

③トレーサビリティー
アパレル繊維産業の構造は「複雑」で「分断的」なので製造流通への不信感が少なからずあります。
原料、紡績、織布、染色、製造、検品、デリバリーまでの情報をシンプルなトレーサビリティー機能で「単純化」「見える化」「透明化」するPLATFORMをつくりましょう。